現在の日本の社会では、“雇用”が極めて不安定になってしまっています。
昨年秋のリーマン・ブラザーズの倒産を契機に、急激な景気の悪化と同時進行して雇用調整が始まったのです。
雇用調整は、通常、景気の悪化からタイムラグがあったにちに行われるのがこれまでの姿でした。
しかし、今回の景気悪化の環境だと、困難を伴う意思決定をしたとは思えないあまりに素早い企業の雇用調整によって、企業の経営者には“雇用を守る”という気持ちがすでになく、逆に過度な“株主利益偏重”の姿勢をもっているということを如実に証明してしまっているのです。
わが国産業では国際的なコスト競争力の維持強化をするため、派遣社員の解雇や、正社員の雇用調整ということも今後さらに拡大するというのは明らかです。
この雇用の構造的問題は、単なる経済問題を超えて、大きな社会問題となり始めてしまいました。
ここで改めて、企業に“雇用”されるということ、について考えてみたいと思います。
いまから40 年前の1970 年に、企業の雇用者であったのは64%で、20%の人は自営業でした。
それが現在では、企業の雇用者が84%、自営業は10%となっています。
世の中のほとんどの人はサラリーマンになってしまったというのが現実です。
雇用の機会がないことも問題であるが、一方ほとんどの人が雇用者であることも、社会にとってあまり健全なことだとは思えないのです。
いつも企業の都合でリストラされる危険性と隣り合わせの社会。
というのは、安定感に欠けるし、また、自立的な自営業が多数生まれて経済が活性化し、新しい産業が沸き起こるということが期待できなくなるのです。
そうした点で、今回の不況下でこれまで政府が行ってきた対策というのは、“雇用”に偏重しすぎということが言えるのです。
雇用の場となる企業がヘタっているのに、その機会を提供する産業や企業が育っていないのということは、“雇用”をめざした教育訓練や就職あっせんが政策というのは筋が悪すぎるということです。
むしろ、定年退職者や若者はじめ多くの人が雇用に頼らないで自分で事業を起すこと、すなわち“起業”するよう促すことが必要な状況になってきているのです。
そのような起業が多数沸き起こることによって、将来の成長の芽が育つ環境というのをいま作る必要があるのです。
政策的な資金というのは、この“起業”のための訓練資金や開業資金として多くが充当されるべきだと考えています。
